皆さんこんにちは。
何気ない日常評論家・ヨシコシです。

都会の空はいつも灰色、ビル建築もグレー、ベージュ、黒など
そつないトーンであります。
奇抜さは求めなくとも、本当に自分たちの町に必要な色彩とは何か、
商業建築でも住宅建築でも、自然と集落の調和、コミュニティ的な視点から
建築物が体現する美しいものとは何か、これを洗い出す作業に時間を割きません。
対話と調和、時間と手間をかけることは、経済に逆行するからです。

2008年12月の朝日新聞の経済面では、
『美の条例』が取り上げられておりました。
記事の内容は、

2008年5月、
神奈川県の人口9000人の港町へ、韓国から視察団が訪問しました。
10名の視察団は、真鶴町の「美の条例」を勉強するために来訪しました。
帰国後、韓国の新聞では、真鶴町を賛嘆し、
「目立つ建物はないが、日本で最高のデザイン実験都市」である。
真鶴町をパリと並べて絶賛した

という内容でした。
皆さんは、日本で最高のデザイン実験都市をご存知でしょうか。
それは、
世界的に著名なデザイナーがデザインした奇抜なものでなく、
国が推し進めたクールジャパンでもありません。

日本で最高のデザイン実験都市は、
9000人の町民からなる真鶴町が、
土地に由来する自然から美しさに関わるエッセンスを抽出し、
それをデザイン・コードとして明文化した条例に基づく町づくりであります。

バブルの絶頂期に突き進んでいた80年代当時の日本、
テレビで金箔入りの1万円のラーメンがニュースとなり、
成金の日本人がお金を惜しまず好きなものを手に入れはじめた風変わりな時代でした。
当然、都市部の狂乱は、豊かな自然をもつ田舎へリゾートマンションの
開発ラッシュとして押し寄せてきます。
こうした乱開発は、国の都市計画法や建築基準法の規制では、
止められません。
つまり、「数字による規制」では歯止めが全くきかないのです。

真鶴町はこの対抗策として、「まちづくり審議会」を立ち上げ、
審議会の会長に都市計画家・五十嵐敬喜、
委員には、条例などを専門にする法律家・野口和雄、
建築家でクリストファー・アレグザンダーの設計方法論に精通する池上修一
の3名の専門家を核として、独自の条例づくりに動き出します。

そこで生み出されたのは、
これまで役人が生み出した条例と全く異なるアプローチからなる精神の原則でした。


美の条例―いきづく町をつくる
著者:五十嵐 敬喜、野口和雄、池上修一
学芸出版社 1996年



■真鶴町の美の8原則と基本的精神

①場所     場所を尊重し、風景を支配しない
②格づけ     私たちの場所の記憶を再現し、町を表現する
③尺度          基準は人間。人間と調和し周囲の建物を尊重
④調和          青い海と輝く緑の自然、町全体とも調和
⑤材料          町の材料を活かして作る
⑥装飾と芸術  装飾が必要で芸術との一体化を
⑦コミュニティ  美しい眺めを育てるためにあらゆる努力を


こうした精神原則を個別の計画に落とし込んでいった時に、
傾斜地では斜面に沿って屋根を架け、
昔からある小さな路地を大切に植栽を施す
ような考えを尊重するようになり、
真鶴町は開発の荒波に対抗することができるようになったのでした。

さてさて、
今日は2月7日、私たちの工房にとってもよき日であります。
監督の布山と設計の池上の誕生日。

布山はまだ、30代後半なのでよいです。

何しろ池上は今日で還暦です。
池上とは、美の条例を作った「池上修一」です。
こんなに素敵な条例に関わってきた建築家が、
私たちの工房で、建築事業の立ち上げに参画し、
今も設計の長として仕事しております。

気持ちいいデザインに空間を尊ぶ設計事務所と
住宅性能を疎かにせず、高い品質を目指す工務店

これを融合させるべく池上も現役で走っております。
まだまだこれからも
世のため人のため、現役で走ってもらいたいと思います。



池上修一 建築家2

「赤いちゃんちゃんこなんて池上氏には似合わない!」
工房の有志から赤いシャツをサプライズ・プレゼント。
池上氏が自宅から持参したアンディ・ウォーホルの絵と一緒に。


お読みいただきありがとうございました。