皆さんこんにちは。昨日10歳になった娘にさいたまカルタで惨敗したヨシコシです。

お施主様のご厚意で今月の18日、19日に
川口市にて2×4工法の構造見学会を行わせていただきますので、

今日は
2×4工法の歴史
についてお話いたします。

長くなってしまいますが、狭小地でのご新築を計画されている方には
特に参考になると思います。


それでは、はじまりはじまり。


2×4工法の名前の由来
2×4工法は、
アメリカでは「Platform construction(プラットフォーム工法)」と呼ばれています。
2×4工法は日本独自の呼称で、
使用する構造材が2インチ×4インチの木材で構成される特徴から、
キャッチーな表現として日本で広く定着しています。

アメリカの「プラットフォーム工法」の「プラットフォーム」とは「作業床」を意味します。
これは、プラットフォーム工法が、
「床→壁→床→壁」
と順を追って組み立て、
壁を建てる時には、
すでに作業のしやすい床が組みあがっている合理性に由来します。


実は「1.5×3.5工法」?
現在、北米の木造住宅の90%以上が2×4工法で、
世界中にもこの工法が普及しています。
2インチ×4インチの木材は、ミリ寸法では「50.8mm×101.6mm」となります。
ですが、
実際に使用されている木材は「38mm×89mm」で
「1.5インチ×3.5インチ」となります。

アメリカでもこの寸法が使われてます。
1940年代半ばまで「50.8mm×101.6mm」の木材を使用していましたが、
第二次大戦後の建築ラッシュによる木材不足と価格の高騰で、
0.5インチ分だけ幅の狭い木材を正式材として使用するようになったためです。



2×4工法の原型は「バルーンフレーム工法」 
バルーンフレーム、プラットフォーム、2×4工法
「プラットフォーム工法」の原型は
「Balloon frame construction(バルーン・フレーム工法)」と言われ、
アメリカの西海岸で多く見られる工法でした。

1800年代の初頭、
アメリカでこの工法に関する用語がすでに存在していたことが文献上で確認されています。

歴史的に認知されている建物は、
1830年頃のシカゴの倉庫であったようですが、
それは平屋であったため、
1・2階を通し柱で構成する完全なバルーン・フレームではなかったようです。

当時のアメリカは、欧州移民によるフロンティアやカリフォルニアのゴールドラッシュで
大量の住宅需要がでてきました。
それまでは各移民の出身国ごとに建築様式もバラバラ(コロニアル様式)、

よって一棟一棟、熟練職人による複雑な構造が主流でした。
当然、人材や木材の確保も困難な状況に陥ります。
その頃、

産業の近代化の後押しで、釘の大量生産や木材プレカット技術の発展に支えられ、
現在の2×4工法の原型となる
「Balloon frame construction(バルーン・フレーム工法)」が生まれます。

このバルーン・フレーム工法、1920年代~30年代に入って
建築家・リチャード・ノイトラが鉄骨造の鋼製耐力壁を木製パネルに置き換え、
壁や窓などの設計モジュールの標準化を試みた実験的住宅を発表します。

これは産業的な合理性を追求した
現代の2×4工法住宅のプロトタイプと言えるようです。

ノイトラの試みは、

歴史的には「クローズ」な技術を、
適用度の高い「オープン」なシステムへ翻訳していく作業であったと言えます。

大量の需要に量産できる技術で応える。

世の中の役に立つために開発された工法として、2×4工法は産声をあげました。



札幌の時計台が2×4の先駆け
明治時代に外来工法として輸入されたバルーン・フレーム工法は、
当時の日本にはまだまだ高額な工法でした。
1878年、札幌で建築された「時計台」がこの工法です。

札幌時計台,バルーンフレーム工法
札幌時計台,バルーンフレーム工法,図面
当時の日本では経済的にも住宅の大量供給の必要性がなかったため、
普及するに至りません。

その100年後、1970年代、
日本は高度経済成長で一億総中産階級時代に入り、
住宅需要も急速に高まります。
効率的で生産性が高く、品質を担保しやすい2×4工法が脚光を浴びます。

建築的には昭和40年代から
「在来軸組工法」と区別する上で
枠組壁工法
と表現されるようになりました。


アメリカのゴールドラッシュの100年後、
日本でも経済成長に合わせて普及がはじまった2×4工法。
共に両国の経済発展をきっかけに、
産業的な合理性に支えられて普及していった。

これが、2×4工法の歴史的な特徴と言えます。



2×4工法のメリット
2×4工法のメリットは、工期が早く、コスト面でも軸組より割安で、
気密性や防音性にも標準的に優れ、
住宅品質も安定しやすい特徴があります。
工場製作によるパネル組と現場での手組みの施工方法がありますが、
軸組工法のようにレッカー車の入れない狭小路に面した住宅密集地で
手組み工事が可能なため、
日本の都心部の住宅密集地での施工性は特に優れております。
間取りの自由度は軸組工法には劣りますが、
4.5m×4.5m(約12畳)の空間程度であれば特殊計算をせずに確保できます。
スキップフロアも可能です。


2×4工法のデメリット
壁が構造の強度に密接に関わってくるため、
竣工後のリフォームによる間取り変更や間仕切り壁の撤去といった、
将来の増改築には不向きな工法です。
また、在来軸組工法のように、
窓の上端を天井面に合わせて取り付けることができないこと、
広いLDKなど、大空間の確保に関しては、軸組工法に比べ劣ります。
フレーミングの工事では、床、壁、床、壁と順に施工を進めていくため、
フレーミング工事中の降雨によってプラットフォーム(床)が濡れるリスクがあり、
雨養生の計画が大変重要です。
雨の少ないアメリカ西部生まれの工法であるため、
工法自体に罪はありまん。
施工者側で床に撥水材を塗ることや、雨養生シートを張るなど、
工法の長所を生かすための配慮が必要になります。
また、天井裏の隙間が軸組工法に比べ狭くなるため、配管の経路など、
下がり天井が出てくる場所もでてくる可能性があります。



常々お伝えしていることですが、
工法や構造自体に優劣はありません。
お施主様のご計画概要やご要望と照らし合わせ、
比較すべき事項の焦点が定まって
各メリットと各デメリットを検討した上で、
ベターな工法、ベターな構造を提案するのが工房STYLEです。


参考資料:
(社)日本ツーバイフォー建築協会
「枠組壁工法による米国近代住宅の意匠に関する研究」」

お読みいただきありがとうございました。

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