皆さんこんにちは。噂話より例え話が好きなヨシコシです。

皆さんは、シングル・モルト・ウィスキーをご存知でしょうか。
シングル・モルト・ウィスキーは、
発芽した大麦を原料としたスコットランド産のウィスキーの一種です。
100以上あるスコットランドの蒸留所で生産された単一銘柄をいいます。
名前がゲール語表記なので、覚えづらく、馴染みのない方には
魔法のような響きがあります。

例えばLAPHLOAIG。「ラフロイグ」と発音し、ゲール語で「広い入り江の美しい湾」
という意味があります。
LAPHLOAIG


私が好きなシングル・モルトのひとつはMORTLACHです。
「モートラック」と読みます。
これはゲール語で「すり鉢状の窪地」を意味します。
MORTLACH


しっかし、シングル・モルトって、

色々ありすぎてどれがいいのかわからない・・・。


なんだか工務店とよく似ています。



そう、工務店は

スコットランドの地酒であるシングル・モルト・ウィスキーにポジションがよく似ています。

スコットランドには、

大小100以上の蒸留所が存在し、
味もエリアごとにまちまち、蒸留年代、熟成年、熟成樽の種類もかなり自由度が高いお酒です。

つまり、シングル・モルトの銘柄による個性の違いは工務店ごとの個性の違いにとてもよく似ています。
品質もこだわりのポイントも共にまちまちです。

そもそも18世紀にイングランドの傘下となったスコットランドは、
支配者から新たに課せられた高額な酒税から逃れるため、
北へ北へと逃れながら、密造を続けてきた歴史があります。

そうした無名職人による蒸留技術へのこだわりが、
19世紀初頭にさしかかる頃、小さな蒸留所を建設するまでになっっていったのが
シングル・モルト・ウィスキーです。


各蒸留所によって人気も味もまちまちですが、
自分に合うシングル・モルトを見つけるのは、
自分に合った工務店を探すのに似ています。


ところがこのシングル・モルトに新しい波が押し寄せます。

1900年代、喜ばしいことにスコットランドのウィスキーは
その美味しさから、世界中の脚光を浴びるようになりました。

ところが、売れ出したのはシングル・モルト原酒を数十種類ブレンドして
口当たりをとても柔らくしたブレンド・ウィスキーでした。

大量に需要の出たブレンドウィスキーの原酒にまわすため、生産量を飛躍的にUPさせることになります。
小さな蒸留所では5名くらいで操業している田舎の蒸留所です。
これまでの設備では当然ながら、全く対応できません。

そして、各蒸留所は、
1970年代にかけて蒸留設備の近代化に舵を切ります。


これが、スコッチにとって、後戻りできない致命症になりました。


1960年代までは、近隣の畑で採れる大麦を主に収穫して蒸留していたのですが、
需要が追いつきません。

今では大麦の数十%は輸入されるようになり、
ピートによる乾燥も外注の巨大工場でレシピ通りにやらせます。
肝心の熟成も系列親会社が蒸留液をタンクローリーで英国南部へ運び、
集中熟成庫で一緒に熟成させることが普通になりました。


もはや、シングル・モルト本来の郷土のもつ強烈な個性は失われ、
自らの首を絞める道を今も突き進んでおります。

工務店に例えますと、
年間5棟程度の小さな工務店が、
同じ社員で年間50棟施工する体制に変わったようなものです。


広く普及させることと手作りの良さを維持することは、概ね相反するような気がします。
工務店にとって、とてもとても難しい問題です。



では、今度は大手のハウスメーカーさんをお酒に例えると?


量産規格で安定品質を大量に建築できる大手ハウスメーカーさんの家づくりは、
移民とともにアメリカに出現したウィスキーに似ています。


アメリカのウィスキーは主に現地で取れるとうもろこしが主成分のバーボンが有名です。
ワイルドターキーやジム・ビームなど、銘柄は数百種にのぼります。
表記も米語なので覚えやすい。数百種類の銘柄が販売されているバーボン。
でも実際には蒸留所の数は数えるほどしかありません。


イーニアス・コフィーが発明した連続式蒸留器によって、
連続式蒸留器
大規模な蒸留が可能になり、原材料の配合比率を少し変えるだけで、
違う名前の商品で販売されます。

大量に安定生産してコスト管理する点は、
建築的には、自社の設計ルールに制約をかけ、
極力手間のかからない家作りを目指していることと似ています。

パッケージングも上手、量産型で品質も安定しているという点では、
バーボンはシングル・モルトよりも世の中に普及してますし、
大変身近な存在でもあります。


工務店は、昔のシングル・モルトのこだわりを忘れてはきっと終わりです。
バーボンの工業的品質からも参考にしながら、
自分達の身の丈に合った独自の追求を続けること。
これが肝心なのかもしれません。

今日は、弊社ヒライが担当させていただいておりますY様のご契約日でした。

設計の自由度も高く、かつ高品質な住宅性能を。
昔のシングル・モルトのような素晴らしさを求め続ける!!
それが高性能住宅に特化した今の工房の立ち位置なのだと思います。


Y様、末永いお付き合いになりますよう
一同心より願っております。