皆さんこんにちは。
いい日旅立ち、ふと茨城県の
つくば市にいる旧知のバーテンダーさんに会いに行ってきたヨシコシです。

それは私が建築の仕事に携わるずっと以前の
22から28歳の下積修行時代に遡るのですが、
当時勤めていた西麻布のBar Mile end のお客様だった方です。

彼は私と同じ歳で、松島荘志さんと言います。

当時の松島さんは、日中は大手メーカーのC社に勤務され、
夜はバーテンダーという二足わらじの生活をされていました。

そして、バーの営業が終わると、お酒の向学の為に車を走らせ、
つくばから広尾のHelmsdaleや西麻布のMile endに
いらっしゃっていた尋常じゃない体力の持ち主。

探究心旺盛で瞬発力も持久力もあり、
バーテンダーとしては珍しい知性と野性の具有者でした。

そんな松島さんは、
13年前に同じつくば市で
brasserie&Bar finlaggan (フィンラガン)という
お店をつくって独立します。

フィンラガンというのは、
スコットランドのアイラ島の
Caol ila(カリラ)蒸留所の近郊にある城跡の名前です。

松島さんも私もスコッチウィスキーが大好きでした。

20代の終わり頃のある日、
松島さんがMil endにいらした時、
私はスコットランドのダフタウンに移り住んでしまっておりました。

次にお会いできたのはそれから7年後でした。

スコットランドから帰国した私は、
資金稼ぎに別の仕事に就き、
32歳で世田谷区池ノ上にCarlisle(カーライル)というBarを開きました。
その4年後の36歳の時、結婚を機にお店を人に譲ることにして
建築の仕事を志すことを決めたのでした。

松島さんは、引退間際に私が差し出した便りを見て、
つくばから池ノ上まで来て下さり、私達は7年振りの再会。

サービスとは何ぞや、
極めるとは何ぞや、
満足とは何ぞや、
日本でやる価値のあるバーとは何ぞや。

そんなテーマで一度も議論などしたことはありませんが、
昔からどこかお互いの心が通ずるところがあったんだと思います。

そんな彼に差し出す最後のカクテルは、
昔から気に入っていただいていた
特別なスパイスの配合をしてトマトジュースとシェイクして
氷なしでタンブラーに注ぎ、
セロリスティックを挿して出すブラッディーマリー。
調合中、思わずふっと熱いものが込み上げ、
作り手の私も、飲み手の松島さんも
二人共泣いておりました。
友情なのだと思います。

そんな松島さんと
その後は年賀状のやり取りだけ続き、

再び7年の月日が経とうとしておりました。


そうだ、今度は僕が訪問する番だ。

そうしてつくばエキスプレスでつくば市へ。
初めて訪れる松島さんのお店。大きな期待と懐かしさ。
久しぶりに会う松島さん。こちらの想像以上の仕事に驚き、
そしてとても気持ちよく酔わせていただきました。

彼は昨年2店舗目のお店を出し、
今日はそちらのお店にいらっしゃるとのことでしたので、
地図を見ながら、つくば駅郊外の真っ暗闇をひたすら歩きます。
実にマニアックな立地です。
つくば
本当に真っ暗闇で街頭もないところが続きました。

たまに明るい場所があります。
つくば


松島さんの2店舗目のお店は
なんと、Barでなくランニングステーション。

お店の名前は「FLOW」と言います。

歩くこと30分。

この距離はとても遠いですが、
何しろそのお店の基本はランニングステーションですから、
ランナーのお客様には屁でもないのでしょう。

やっとありました。明るい店内。
彼と筑波大生のアルバイトさんが
二人でお店を切り盛りしていました。

つくば市 FLOW ランニングステーション

お客様も筑波大の研究生や研究者の方々が多いようで、
街全体が大学といった感じがイギリスっぽい。

彼の現在は、
私の想像を遥かに超えたところにおりました。


brasserie&bar finlagganの次に出した
この「FLOW」という店は、
今の松島さんの生き方そのものを体現するお店でした。

松島荘志 FLOW フィンラガン
     松島荘志さん。情熱大陸を地でいく人。

彼は素足で走る事に開眼し、
自分が理想的に走れるように自然と菜食主義者に。

野山街中を何十キロも素足で走ることで
自分の体と対話ができる探求者になっておりました。

彼の極めたいという純度の高い欲求は
本当に留まるところを知りません。

こちらは
彼が見せてくれた「Born to run 」「eat to run 」の書籍。
この本との出会いが、今の彼に大きな影響を与えたそうです。

Born to run クリストファー・マクドゥーガル

人間の足はもともと素足で移動するようにできていて、
シューズを履いて走るから、逆に人間本来の走りができなくなり、
走れば走る程、足を痛めたり故障をするのだという。
狼は、犬は、猫は、馬は、走り続けて足腰を故障しているだろうか?
答えは否。ならば人間も本来の走りを追求すれば故障もないはず。
それには本来の素足でのランニングを探求する必要がある。
そうやって人間が本来備えている能力を呼び醒ますのだという本。

この本の中には、それを極めて、
数日間も野山を走りつづけることができる超人的習性を持つ
メキシコのタラウマラ族が出てきます。その部族のエースランナーに
世界的なトレイルランナーが実際に勝負を挑み、そして負ける
という衝撃的な事実と考察が描かれています。

走るという人間の本能について向き合った本。
さっそく私も読み始めました。



これはメキシコに実在するタラウマラ族と「Born to run」の著者
クリストファーマクドゥーガルの動画です。


Eat to run
この本は私は読んでいないのですが、
松島さんによると、著名なウルトラマラソンの走者が、
食べることと走る事についてのメソッドを解説した本のようです。
この著者もビックリするような少食粗食みたいです。


こちらは、異様にゴム底の薄いランニング用サンダル。
松島さんはアメリカの開発者に直接会い、
100足購入したそうで、FLOWで販売しておりました。
素足に限りなく近いこのbetrock社のランニングサンダルを履いて
彼は山の中を50キロも走るようなトレイルレースに参加しているのだそうです。
ランニングサンダル bedrock sandals


もちろん、そうした生き方の他に、松島さんは
昔からのお酒への造詣をさらに深化させておりました。

信じられない程の果実のような酸味を帯びたスイスの自然派ビール
葡萄の搾かすで濁った色をしている自然派の白ワイン、
彼が興味を持つあらゆるお酒は、背景や位置づけが的確に整理され
見事な知識となって来るお客様へ提供されておりました。

Flow  バックバー
       ランニングステーションなのに、このビールの品揃え。
        bodringtone pub ale!懐かしい。(真ん中あたり左側の黄色い缶2本)
        生のクラフトビールは1号店のフィンラガンで7タップ程あるそうです。


自分も負けていられない、
建築の仕事をもっと深く掘り下げていかないと、
松島さんの背中はどんどん遠くに行ってしまう。

彼の現在の見事な進化ぶりを肌で感じて、
ますます私の仕事へのモチベーションが上がったのでした。

本当に来て良かった。

「吉越さん、いつかまた店やるの?」

「そうですねえ。 年寄りになったらですかね。(笑)」

いつかまた一人でふらり、
今度は1号店のフィンラガンに行ってみようと思います。
松島さん、ありがとうございました。
 お読みいただきありがとうございました。
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